古典ヨガの基礎的な知識として、古くから伝わるヨガの様々な思想や実践について解説しています。ヨガの経典として知られている『ヨーガ・スートラ』と『バガヴァッド・ギーター』、そして『ハタヨーガ・プラディーピカー』の三つの経典をご紹介しながら、仏教やシャンカラの不二一元論、チャクラや輪廻思想などについても話題を広げて、ヨガ哲学の基礎知識として1冊にまとめました。
目次
はじめに
真理の探究
01ヨガとは何か
心のためのヨガ
五つのヨガ
ヨガの意味
心の制御
神との合一
02ヨガの歴史
バラモン教の衰退と仏教の台頭
03古典ヨガの世界観
サーンキヤ哲学
サーンキヤ哲学の世界観
トリグナ
ヴァルナ
04『ヨーガ・スートラ』の思想
『ヨーガ・スートラ』
この世で生きることは苦しみ
世界は移り変わる
サンスカーラ理論
トリグナの対立
心の働きの停止
空の世界
解脱
05ラージャ・ヨガ
ラージャ・ヨガの八支則
ヤマ
ニヤマ
アーサナとプラーナーヤーマ
プラティヤーハーラ
ダーラナ
ディヤーナ
サマーディ
イーシュヴァラ・プラニダーナ
禅の十牛図と八支則
幻覚に陶酔する危険
解脱の問題について
06ハタ・ヨガ
アーサナ
プラーナーヤーマ
ムドラー
バンダ
その他の浄化法
クンダリニーの覚醒
07『バガヴァッド・ギーター』の教え
物語のいきさつ
クリシュナが伝えたこと
魂とは何か
三つの体
クリシュナの教え
08『バガヴァッド・ギーター』の世界観
五つの原理
五つの原理の関係
宇宙の昼と夜
ヒンズー教の三神
聖音 オーム
09ジュニャーナ・ヨガ
アートマンの至福に満足する
心や体を自分だと思い込むことによって起こる不安
ジュニャーナ・ヨガの実践
10 カルマ・ヨガ
行為を平等に見る、結果に執着しない
人は行為せずには生きられない
私は行為していない
11バクティ・ヨガ
バクティ・ヨガの実践
神に救われる
大乗仏教と阿弥陀如来
12シャンカラの思想
不二一元論
真実の自己の問い
13人間について
五つのコーシャ
神智学の七本質
チャクラ
各チャクラの特徴
クンダリニー
セフィロトの樹
14輪廻
死後の世界
自分の体に対する執着から離れる
輪廻の数
輪廻と宇宙
カルマ
裁かない
15悟りについて
16愛について
神聖なプラクリティ
世界を信じる
峻厳
恐れを捨てる
慈悲の心を起こす
愛を行う
おわりに
はじめに
今回は、古典ヨガの基礎的な知識として、古くから伝わるヨガの様々な思想や実践をご紹介していきたいと思います。
はじめに、古典ヨガという定義は非常に曖昧なものだということを断りしておかなければなりません。これらはインドで古くから伝わっているものですが、仏教やバラモン教、ヒンズー教など様々な宗教と関わりがあり、ヨガという一つの独立した体系があるとは言えないからです。したがって、本書ではヨガの経典として知られている『ヨーガ・スートラ』と『バガヴァッド・ギーター』、そして『ハタヨーガ・プラディーピカー』の三つの経典をご紹介しながら、仏教やシャンカラの不二一元論、チャクラや輪廻思想などについても話題を広げてお話ししていきたと思います。
私たちがこれからヨガの教えを学ぶにあたって、まずは知ること意味について考えてみたいと思います。知識は、その人の世界を大きく変化させます。例えば、学校で宇宙について学んだ人は、それまで自分が生活していた地域から、広大な宇宙との関わりを持つことになります。このような視野の広がりは、その人に今までとは全く違った認識を与えることになるでしょう。つまり、その人は日本のある地域にいる自分ではなく、太陽系の中にいる自分という新しい場所に住むことになるからです。
こういった世界の認識は私たち一人一人の知識や経験によって異なるので、皆が同じ世界に住んでいるように見えていたとしても、実はそれぞれ違った世界に住んでいるとも言えるでしょう。つまり、私たちは心の中に自分だけの世界を持っていて、その中で生きているのです。
では、あなたの生きている世界はどのようなものでしょうか? それは苦しい場所ですか、それとも喜びに満ちあふれているでしょうか。これからヨガの教えを学んでいく一つの目的は、あなたの生きている世界の意味を解き明かしていくことです。もし、あなたが自分の見ている世界に対して何か不満を感じているなら、それはあなたの前に現れている世界の問題ではなく、その世界を認識しているあなたの心の問題かもしれません。あなたが世界の認識を変えれば、現実はいくらでもその意味を変えることができるからです。
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